2023年7月16日、東海大相模グラウンドで、高円宮杯 JFA U-18 サッカーリーグ 2023 神奈川 K2 第9節「東海大学付属相模高校B(以下、東海大相模)対 神奈川県立厚木北高校A(以下、厚木北)」の一戦が行われ、厚木北が終了間際の90+4分、FW安田一智(17)の値千金ゴールで東海大相模に追いつき、勝ち点1を分け合った。
ゴールまで約20メートル。東海大相模のDF鳥居淳泰(8)の右足から放たれたFKが厚木北ゴールに突き刺さった。時間は終了間際の90+1分、多くの人が東海大相模の勝ちを確信した瞬間だった。しかし、ドラマはまだ終わっていなかった。
そろそろ主審がホイッスルを口にしようかとした90+4分、左サイドからの折り返しを安田がアクロバティックな体勢から左足を振り抜くとボールはGK坂口悠斗(1)の伸ばす両手の先をすり抜けゴールネットを揺らした。
序盤からボールを繋ぐ伝統のサッカーでポゼッションを高める東海大相模に対し、厚木北はDF大坪一耀(4)を中心とした守備でゴール前を固め、相手に自由を与えない。ボールを奪うとシンプルに前線へ運び、その繰り返しで試合は膠着を続ける。
ようやく試合が動いたのは48分。ゴール前でルーズになったボールを詰めたMF井上隆一(5)が豪快に蹴り込み、厚木北が先制する。この失点でギアが入った東海大相模はここから怒涛の攻撃を見せる。サイドに活路を見出すべく途中投入されたFW竹中暉翔(23)が67分にその期待に応えて同点ゴールを決めるとその6分後にゴール前の混戦からFW遠山悠太朗(7)がゴールを奪い逆転に成功。
しかし、厚木北も76分、自陣でボールを奪取したMF太田怜音(13)が一気にドリブルで持ち上がると右の井上に叩きゴール前へ。井上は再び太田に折り返すとこれを井上がダイレクトで流し込み再び試合を振り出しに戻した。
そして90+1分、東海大相模は鳥居の鮮やかなFKで勝利を掴み掛けたのだが…
試合後チームの指揮を執る東海大相模・鈴木達也コーチは「前半のチャンスを入れておけば…守り勝つチームではないので点を取らないと。守りに入ったところとチャンスを決められない自分たちの弱さがこう言う結果に繋がってしまった」と総括してくれた。キャプテンマークを巻き、自身もゴールを奪った遠山も「相手が引いて何枚もいたので上手く崩せなくて…ロングシュートとかも意識していたのですが、距離感が難しかったです。」と悔しそうだった。
これに対し厚木北の渡邊浄仁監督は「相手は個人技があるので選手たちには粘り強く守備して良い攻撃に繋げるように指示していた事が成果として出ました。ただこの暑さがあって…横浜FC戦に負けてから(ボールを)繋ぐようにしたのですが、そこから選手たちがどの様にしたら勝てるのかを工夫を始めて(今日は引き分けと言う結果でしたが)少しずつ成長の跡が伺える様になってきた。」と選手たちの成長ぶりに目を細めた。
この日で前期を終了したK2リーグ。1位・東海大相模から7位・相洋Aまでの勝ち点差は僅か5。正に大混戦である。次週後期の初戦が行われるとしばしの休止期間となるK2リーグ。前期の反省を踏まえて各チームがどう進化してくるのか、最後まで目の離せない戦いは続く。
(取材・文 Kazuhiro.N)