ジェファFCがクラブ創設30周年「感謝」の全国出場!OBが紡ぐクラブの歴史

灼熱の群馬・前橋で、Jefa Football Club(以下、ジェファFC)はヴァンフォーレ甲府U-15との代表決定戦に勝利し、第38回日本クラブユースサッカー選手権(U-15)大会 全国大会への出場を決めた。2023年6月24日のことだった。ジェファFCは今年クラブ創設から30周年を迎えた。この節目の年に、初の全国行きを決めたジェファFCを率いる、U-15監督の山田雅俊氏(以下、山田氏)に話しを伺った。

「今年のジェファは良い」

東京都クラブユース連盟所属のチーム指導者から良くこういった声が聞こえてきた。事実、年初に行われたU-15世代の前哨戦となる2022年度第30回東京都クラブユースサッカーU-14選手権大会決勝トーナメントでは、準々決勝でS.T.FC、準決勝でFC東京U-15むさし、そして決勝でFC東京U-15深川と、関東や全国レベルでも強豪とされるクラブを次々と撃破し、見事都の頂点に立った。

キャプテンマークを巻く古賀大雅(12)や、ジェファFCジュニア出身の嘉味田颯太(10)、西田琉晟(29)、宮内陽翔(26)らが中心となるこのチーム、タレント豊富な世代で創造性豊かなテクニックに長けている。

2022年12月、U-14担当コーチからこの世代を引き継いだ山田氏、「トレーニングマッチでもあまり負けたことがない」選手達を、U-15世代の1つ目の目標であるクラブユースで全国大会へ導いた。

選手には”野心を”

「プロサッカー選手になることが目的ではないですが、プロになりたいと思う子を育てたい」

山田氏は、選手達に野心を持ってもらいたいと語る。東京都でも毎年強豪という位置づけにいるジェファFCの試合には、Jリーグ下部組織や強豪チームのスカウト担当が来場することも多い。そういった場合には迷わず選手達にもその事実を伝えるという。

「トレセンメンバーに選出されているメンバーも多く、そういった選手を中心にメンタルは強い方」とこの世代を評する選手達は、見られることでモチベーションが上がるのだ。

ただ、そういった選手達もまだ成長段階の中学生。指導者としては選手達には当たり前のことも当然求めていく。「周りを良く見て空気を読むことだったりモラルを持ち人に迷惑をかけないこと」。選手との距離感も近すぎず遠すぎず、非常に心地いいと見ている側からも感じる。取材時も、試合前に山田氏が選手たちと談笑する姿が多くあった。

「ただ挨拶をすれば良いというものでは無い。相手の状況を見ろと伝えてます。10人で一人ずつ挨拶に来てたら相手は困ってしまう、だったら全員で一度挨拶をしたらどうか」なるほど、本質をついている。

OBが紡ぐジェファの歴史

ジェファFCは東京都葛飾区・足立区を拠点として活動している。1993年にクラブが発足から今年で30年を数える。U-15のジュニアユース カテゴリーに加えて、U-12、U-15女子カテゴリーも活動しており、今では総勢200名以上が在籍している。

近年ではOBから多くのJリーガーが誕生しており、彼らが在籍当時共に戦った同級生がOBコーチとして指導に当たっている。卒業していろいろな経験を積んでジェファに戻ってくる、だからみんな愛が深い。30年の歴史があるからこそ為せる技だ。そういったスタッフにとっても、この全国大会出場はモチベーションとなり、更なるクラブ愛へと繋がっていくのだろう。

「もちろんクラブスタッフは皆、創設者であり現在はクラブの特別顧問を務める李済華(現國學院久我山高校サッカー部監督)の指導方針を継承しており、選手達は発足以来変らずピッチ内での状況判断とテクニックを磨き続けています。」

感謝しかない

「感謝しかないです」

タレント豊富な今の選手たちに目が行きがちだが、山田氏は決してそこだけにフォーカスして欲しくないと言い切る。「OBが積み重ねてきた結果」そして「東京都クラブユース連盟所属のライバルたち」。そういった周囲の存在への感謝の気持ちを山田氏は度々口にした。

7月10日、錦糸町。この日、東京都クラブユース連盟第3地区の有志でジェファFCの全国壮行会が行われた。筆者も同席させてもらったが、その席上でも山田氏の愛されぶりが垣間見えた。普段は近隣のライバルとして戦う戦友でありながらも、育成年代に携わる同士として切磋琢磨する姿。

30周年の節目、全国初出場。だが、選手たちにとっては1度きりのクラブユースU-15全国大会。歴史と伝統、そして今のタレント性豊富な選手達の躍動が、今から楽しみである。

(取材・文 鈴木優一朗)

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