神奈川県王者を率いる監督は、「和」を作り出すプロ

神奈川県茅ヶ崎市に拠点を置くシュートJrユースFC(以下、シュート)が先日行われた第36回日本クラブユース選手権(U-15)大会 神奈川県大会で初優勝を飾った。2,3月に行われたGrowthCupU-15 Kanagawa2020の優勝に続き、勢いに乗るシュートの鈴木正治監督に指導理念や選手とのコミュニケーションについてインタビューした。

鈴木正治監督

静岡学園高校卒
1989年日産自動車株式会社とプロ契約を締結

日本リーグ優勝 2回
天皇杯優勝 3回
JSLカップ優勝 2回
アジアクラブ選手権 優勝
Jリーグベストイレブン 1回
Jリーグ優勝 1回
フットサルアジア選手権大会 第4位

1992年 バルセロナオリンピック予選日本代表
1993年 横浜マリノス(通算142試合4得点)
1995年 日本代表に選出(国際Aマッチ2試合)
1997年 名古屋グランパス(通算2試合)
1999年 引退
2001年 フットサル日本代表に選出
2007年 シュートJrユースFCを創設

ベンチで寡黙な監督、戦いながら成長する選手

シュートは神奈川県(U-15)サッカーリーグの2部に属している。先日行われたクラブユース選手権神奈川県大会の準決勝では格上にあたる1部の横浜FCJY戸塚を相手に、3点を奪い合い突入したPK戦を制し勝利した。「まさかこの学年で優勝するとは思わなかった。中学生(の成長)は恐い」と語る鈴木監督だが、その裏には確固たる指導理念が隠されている。

シュートはシュートスピリットという指導方針を掲げている。「心技体の向上」「団結力」「社会性・人間力」この3つで構成される指導方針だ。鈴木監督の言葉の端々にこの3つは感じられたが、インタビューを通して読み取ることができた指導理念は「選手の自立心、選手同士の和を育む」ことのように感じられた。

鈴木監督は試合中、ピッチの選手に声をかけることをほとんどしない。「試合は学校でいうテストみたいなもの。指導者が細かく指示を出せばある程度守れるだろうが、それでは育成ではない。」という。選手たちは自分たちで考え試合中に修正していく。クラブアドバイザーの元日本代表・木村和司氏から「教え込まないこと」を忘れないようクラブ創設時に言われたという。指導者が教え込むと、選手はその指導者以上の選手にはなることができない。この考えで選手の成長を見てきたため、クラブユースでも「中学生(の成長)は恐い」という言葉が出たのだろう。

指導の緩急

力を抜いて選手がチャレンジするためには信頼関係が肝となる。変なプレッシャーがあると選手は固くなる。信頼関係を築くために鈴木監督は選手(中学生)の目線まで降りていく。中学生が好む砕けたコミュニケーションを鈴木監督から積極的に持ちかけ良い距離感を作っている。インタビューの中でも常に冗談を交えて笑いを絶やさない鈴木監督だからできる選手との関わり方かもしれない。

しかし、それだけでは”緩い”チームになってしまいそうだ。しかし、ここにもしっかりと考えられた仕組みがある。選手の人間性を高めチームとして和を作っていく仕組みだ。いくつかこれは許さないということがある。一例を挙げると、ウォーミングアップに手を抜く・取られたボールを追わない・「うざい、きもい、だるい」こういったネガティブな言葉や人格否定、差別につながる言葉、これらは許さない。こういった行動をとってしまった選手に対する対応を聞くと、シンプルに試合に出さないことだという。怒鳴るなどはもってのほか、一度外す、もしくは外すことを言い渡しつつ、「ちょっと自分で考えてみて」と声をかける。一見、冷たく突き放しているかに見えるが、そうではなく、すぐにまたチャンスを与えるという。

また、特徴的な仕組みとして”選手だけでのミーティング”がある。シュートでは試合前に必ず選手だけでミーティングをするそうだ。このミーティングで行われることは試合に向けた個々人のアウトプットだ。個人として取り組むこと、そしてチームとしてどうしたいかを選手一人一人がアウトプットする。そして、アウトプットに対しては基本承認する。

1年の最初にミーティングの仕方を簡単に伝えて、何人かを上級生のミーティングに参加させる。参加した選手が自身の学年のミーティングに持ち帰る。あくまでも選手だけで構築していくミーティングというわけだ。こうして発言力のある選手が育っていくと、ゴール後に選手同士で「点は入ったけど、もっとこうした方が良かったんじゃないの?」というようなコミュニケーションも生まれるそうだ。「簡単ではないけど、サッカーを通して自立心であったりチームとして和を作り出せる人間に成長させる。」非常に柔らかくおおらかな監督と、選手の人間性を高める仕組み、この両輪で個人の成長とチームの和を作り上げているのだ。

狭い局面こそチャレンジを

シュートを象徴する選手の一人に松田悠世(桐光学園1年)がいる。何人に囲まれようが隙間を突く突破で打開しゴールをゲットできる選手だ。「攻撃であれば1人で11人抜いて決めてしまうのが究極。1対1はもちろん勝負。1対2で相手に囲まれたら前進をやめろとは言いたくない。」鈴木監督は一見セオリーから外れるようなチャレンジを積極的に勧めている。一見するとワンマンプレーに見えそうだが、パスを出すかどうかはボール保持者が決めること、あくまでも周囲の選手はボール保持者のサポートという位置付けが根付いている。これも選手同士の厚い信頼関係が下支えしている。

松田悠世(桐光学園)

「攻撃の弱いチームに強いディフェンダーは育たない。シュート力の弱いチームに良いゴールキーパーは生まれない。全員攻撃、全員守備を念頭に置いている。」攻撃起点にこの好循環を回すことでトータルのレベルを上げているのだろう。

チームの目標は選手が設定

あくまで選手の自立を重視しているシュートはチームとして目指すものも選手が決めるそうだ。選手たちが決めた目標にスタッフが合わせる。クラブユース選手権神奈川県大会のチャンピオンであるシュートイレブンは全国大会を目指す。関東大会に向けて格上と行なっているトレーニングマッチで負けた選手たちに「やっぱり全国厳しいから関東大会2回戦突破に目標変更しない?」と冗談めかしく言える鈴木監督だから流石だ。

明日26日(土)、シュートJrユースFCのイレブンは全国大会出場を目標に関東大会初戦に臨む。

(取材・文 Yuya Akiyama)

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