2023年11月5日、小笠山総合運動公園エコパスタジアムで、第102回全国高校サッカー選手権大会静岡県大会 準決勝「県立浜名高校(以下、浜名)対 県立藤枝東高校(以下、藤枝東)」の一戦が行われ、藤枝東が延長後半にDF河野勇翔(5)の絶妙なクロスから相手のオウンゴールを誘い、100分間の激戦を制し、決勝戦に進出した。
この時期としては異例の暑さを記録した快晴の青空の下、試合は定刻通りに浜名のキックオフで開始された。
開始早々から積極的な攻撃を魅せる浜名。細かくパスを繋ぎながらゴール前へと侵入、序盤から主導権を握るがフィニッシュに持ち込む事が出来ない。これに対し藤枝東は的確なボール奪取からカウンターを狙い、前線のFW植野悠斗(16)に繋げようとするが、浜名もしっかりと守り試合は膠着を続ける。
後半に入っても一進一退の攻防は続く。48分、浜名はスルーパスに反応したFW西岡修斗(9)が絶好のチャンスを得るが、GK藤崎蒼葉(1)の好セーブに遭い先制はならず。その後も前半途中で負傷のFW加藤千寛(10)に変わって投入されたFW川嶋琉之亮(7)の3本のシュートを筆頭に浜名が計6本のシュートを浴びせるが、藤枝東も粘り強く守り、80分が終了。試合は延長戦にもつれ込む。
延長前半終了間際にも川嶋が惜しいシュートを放つなど延長に入っても相変わらず浜名のペース。しかし、ドラマは突然に訪れた。92分、中央付近で途中出場のMF藤井有志(25)がボールを持つとすぐ様左サイドに張るDF河野勇翔(5)へ展開、河野は素早く前に運びゴール前へ高速のクロスを投入。このボールがクリアに入った浜名のDFに当たりゴールへ吸い込まれ、藤枝東が遂に先制。ガックリと項垂れ(うなだれ)倒れ込む浜名DF陣を背に藤枝東の選手たちがここまで必死に声援を送り続けた応援席へと走っていった。
それでも最後の力を振り絞り、同点ゴールを目指した浜名だったが、藤枝東も集中を切らさず守り抜き、3年連続の決勝進出を決めた。
試合後のインタビューで藤枝東の植野は『浜名が凄く繋いで来てキツい時間もあったがチーム全体で粘り強く戦った事が勝利に繋がった』と試合を振り返った。決勝戦に向けては『支えてくれているみんなが僕の力になっている。決勝も(そんな)みんなの為にも頑張りたい。』と力強く意気込みを語った。
積極的に攻め、主導権を握り続けた浜名。オウンゴールというまさかの形で勝利を逃したのは悔しさしかないかもしれない。しかし、100分間に渡り多くの観衆を沸かせたのも事実。下級生たちはこの雰囲気を求めて、来年もこの場所に戻ってきて欲しい。
(取材・文 Kazuhiro.N)