2023年年10月29日、相模原ギオンスタジアムで、2023年度 第102回 全国高校サッカー選手権大会 神奈川県2次予選会 準々決勝「座間高校（以下、座間）対 湘南工科大学附属高校（以下、湘南工科）」の一戦が行われ、途中出場のFW山内蓮生（17）のゴールで湘南工科が追い縋る座間を振り切り準決勝進出を決めた。
立ち上がりからFW中山陽輝（10）を中心に追い風も利用しながら長短織り交ぜてボールを動かす湘南工科。7分、中山からパスを受けたMF栗林真秀（2）のパスをMF佐藤颯人（14）が『トラップして思い切り振り抜くだけでした』の言葉通りシュートを放つとこれがゴールネットを揺らし、湘南工科が幸先よく先制する。更に攻撃のテンポを増した湘南工科は13分にも右サイドで細かくパスを繋ぎ中央へ折り返すとこのボールをDF小林智輝（4）がミドルレンジから狙うがこれはバーを超えていく。
その後も常に得点の匂いを醸し出しながら『神奈川一ボールを動かすサッカー』を魅せるものの、座間の堅守で追加点を奪えず前半を1点のリードで折り返す。
サイドが変わった後半、座間も逆襲に出る。キックオフ直後の右サイド奥へのロングボールで湘南工科のファールを誘うとDF吉田幸太郎（4）の左足から放たれたFKはファーサイドのゴールネットに突き刺さり試合は振り出しに。
この一撃で再び目の覚めた湘南工科は、44分にFW服部竜馬（9）、47分には中山、そして49分には栗林と次々にGKと向かい合う局面を作るものの、座間のGK中村翼（1）にいずれもセーブされゴールを割る事が出来ない。
更に61分にはクロスボールを捉えた中山のヘッドを中村が右手1本で弾き出すと流れは座間へ。77分、カウンターからDF小峰健太郎（7）がドリブルで持ち込みシュートに持ち込むが、惜しくもクロスバーに弾き返され絶好のチャンスを逃す。
すると湘南工科は終了間際の79分、MF上野海里（6）からのパスを受けた途中出場のFW山内蓮生（17）がこれをキッチリと枠内に収め勝ち越し、巧者・座間を破り準決勝に進出した。山内は3回戦の光明相模原戦に続いての決勝ゴールでチームを勝利に導いた。
試合後、湘南工科大附属の室井雅志監督は『前半あそこで2点目が取れないというのが…幸先よく（先制点は）取れたのですが…後半も「しっかり入ろうな」と言ったらアレなので。この競技はワンプレーで流れというか、やっぱりメンタルのスポーツなんだなと思いながら、それでも気落ちする事無くやれていたが、技術でもう一個押し込めないと。全ては前半で勝負を決めきれない弱さですね。決めるチャンスはあったので…』と苦しい戦いとなった試合を分析した。更に準決勝の日大藤沢戦に向けては『技術的なものとかフィジカル的なものは、この一週間で変わるとは思えないが、意識のところや貪欲さ、もうひとつ身体張るとか準備する事は出来ると思うのでその辺はしっかり詰めて全国3位に戦いを挑みたいと思います。』と笑顔を見せながらもその目には闘志が漲って（みなぎって）いた。
またキャプテンの小林は『前半シュートチャンスが多かったが決めきれず、それが後半の失点に繋がってしまった。全員で声を掛け合って最後勝ちきれたのは良かった』と試合を振り返った。そして『去年の（キャプテンの）三浦君もチームでやる事を合わせるという事を意識して声をかけていた。それを見習いながら自分らしさも出して（この先の戦いも）頑張っていきたい』と次戦に向けての意気込みを聞かせてくれた。
2試合続けての決勝ゴールでチームに勝利を呼び込んだ山内。『自分は後半から出場する事が多く、体力がある段階で入ってくるので常に相手の背後を狙って走って、そこから狙うのを意識していたら味方から良いパスが来て、あとはキーパーと1対1だったので流し込みました。』と自身のゴールを振り返った。正にゴールハンター、トーナメントを勝ち切るには山内の様な存在は必須。当然マークも厳しくなるがこの先の彼の活躍にも注目したい。
惜しくも勝ちきれなかった座間。毎年堅実なチームを作り、トーナメントの上位に食い込んでくるのは今年も同様であった。キャプテンの中村は自ら身体を張って先頭に立ち、周りの選手も一人ひとりが役割をしっかりと果たしながらチーム力を持ち上げる試合運びは見事であった。
（取材・文 Kazuhiro.N）
