2023年度 第102回 全国高校サッカー選手権大会 神奈川県2次予選 3回戦「東海大学付属相模高校(以下、東海大相模)対 慶應義塾高校(以下、慶應)」の一戦が行われ、慶應が延長前半のアディショナルタイムにFW阿部雄大(10)が挙げた決勝ゴールを守り抜き、準々決勝進出を勝ち取った。
立ち上がりから東海大相模はMF沖本陸(10)を軸に、FW杉山太成(9)が右サイドから、MF矢口颯人(7)が左サイドから次々と攻撃を仕掛けて慶應ゴールに迫るが、慶應守備陣の粘り強い守りになかなか枠を捉えさせてもらえない展開が続く。
守備の時間帯を凌ぎながら徐々にリズムを掴み出した慶應は33分、左サイドでボールを持った阿部からのパスを受けたFW居郷元(22)がシュートを放つがボールはファーポストを掠め先制ゴールにはならない。
すると36分、今度は東海大相模が中央から右サイドに流れながらヒールで出したFW山田大樹(13)のパスを受けたDF佐藤碧(5)がミドルレンジからゴールを狙うが、これはクロスバーを大きく超えてしまう。
前半をスコアレスで折り返した両チームだったが、後半は攻守が目まぐるしく変わり、互いにゴール前まで迫るものの決定的なシーンが作れず膠着、結局80分を終え試合は延長戦へ。
するとその延長で遂に均衡が破れる。延長前半アディショナルタイム、慶應は阿部がドリブルで相手陣内に侵入しCKを獲得すると、そのCKを自らのヘディングでゴールを決め待望の先制点を挙げる。
何とか追いつき逆転したい東海大相模もこれまで以上に仕掛け、加えてロングボールをゴール前に送るが、慶應も落ち着いてこれに対応。結局、阿部が奪った虎の子の1点を守り切りベスト8進出を決めた。
試合後、慶應義塾高校の大方貴裕監督は「ちょっと硬かったかなと思いますが、粘り強くしっかりと最後まで良く集中力を切らさずに戦ってくれたかなと思います。(チーム結成当初)キャプテンが『家族の様な、ファミリーの様なチームになりましょう』と掲げていたのを少しずつ積み上げてきて、ようやく一体感が出てきて、(今日は)応援も一体感があって良いゲームになったと思います。」と正に全員で勝ち取った勝利だったと話してくれた。決勝ゴールを決めた阿部は「前半はあまりチームに貢献できなかった。延長前半で良いゴールが決められてチームを勝利に導く事が出来て良かった。」とひと仕事をやり遂げ充足した面持ちだった。またキャプテンのDF山中遊太(5)は「自分たちは絶対失点ゼロでと言う事で、焦らず中で焦(じ)れずに耐えて自分たちの流れの時に点を取れて良かったです。」と自分たちの考えていた試合運びが出来たとしっかりした口調で話してくれた。
5月のK2リーグ桐光学園戦の試合後、後藤功部長が「ウチは(推薦制度は無く)サッカーが好きな子達が集まった寄せ集めなので伸びしろしかないんです。だからみんな頑張ってやっていますよ。」と優しい眼差しで選手たちを見つめながら話されていた。当時は『個』の力が目立っていたチームが、ここまで『個』の力も磨きながら積み上げ『チーム』の力も大きく成長させていた。そんな伸びしろしかないチーム…次戦の日大藤沢戦も楽しみだ。
惜しくも敗れてしまった東海大相模。前半から果敢に相手ゴールを目指す攻撃力は圧巻だった。慶應の粘り強い守備にフィニッシュ出来ず、最後まで主導権が握り切れなかったのが悔やまれる。スターティングメンバーには1、2年生も多い。この悔しさを糧に彼らには再び強いチームを作りあげて行って欲しい。
(取材・文 Kazuhiro.N)