2023年9月10日、学習院高等科グラウンドで、第102回全国高校サッカー選手権大会東京都1次予選 2回戦「明治学院高校(以下、明治学院)対 目黒日本大学高校(以下、目黒日大)」の一戦が行われ、目黒日大が後半ATのMF安達海晴(10)の同点ゴールで持ち込んだPK戦を7-6で勝ち切り、17日に行われる都立調布南高校とのブロック決勝へと駒を進めた。
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「我慢をとにかくしてセカンドボール拾う、球際を戦うと言い続けて、どこかで必ず自分たちの時間帯が来るから、その時に焦らず冷静に最後ゴールできる様に、その冷静さだけは忘れない様に選手たちには話していました。」試合後、目黒日大・穂坂亮監督が話した通り、目黒日大にとっては厳しい試合展開だった。
序盤から激しい寄せでボールを奪い積極的に攻撃を仕掛ける明治学院はクーリングブレイク明けの26分、この試合でも攻撃の大きな軸になっていたMF渡邊大斗(5)のロングスローからのルーズボールをMF土井陽平(8)が豪快に叩き込み先制する。その後もロングスローを織り交ぜながら優位に試合を進めるものの、目黒日大も集中を切らさずボールに食らいつき追加点を許さない。
後半に入ると目黒日大も中盤での強度をより高めボールを奪うとMF荒井十蔵(11)やクーリングブレイク明けから投入されたMF大久保碧人(13)の推進力を活かし明治学院ゴールに迫るものの、DF山本真太郎(16)らの粘り強い守備にフィニッシュに持ち込む事が出来ない。
夜の闇の深まりと共に時間は経過し試合はアディショナルに突入。このまま明治学院の逃げ切りかと思われた90+2分、目黒日大は自陣でのFKを獲得。キッカーのGK板倉大心(1)は「自分のストロングポイントはロングキック、点を絶対取りたかったので『誰か飛び込め!』という気持ちで蹴りました。」ボールは大きく弧を描いてゴール前の競り合いの中へ。溢れたボールにいち早く反応した安達が振り抜いた右脚からの渾身の一撃は「以前の自分なら上にふかしてしまったかもしれないですが、自分を信じて落ち着いて合わせる事が出来ました。」の言葉通り、寄せに来たDFの脇を掠め、そのままゴールに突き刺さった。
土壇場で振り出しに戻った試合は直後のホイッスルで80分の戦いを終えPK戦へ。悪い流れを断ち切るべく円陣を組んで気持ちを確かめ合った明治学院も譲らない展開が続き6人目まで両チーム全員が成功。先攻の目黒日大7人目がきっちり成功を収め、迎えた明治学院7人目、ゴール左を狙った一撃は、横っ飛びした板倉の右手の先から枠外へ消えていく。この瞬間、目黒日大の勝利が決まり、熱戦の終止符が打たれた。
試合後、穂坂監督は「今週行われた日大の付属大会(日本大学体育大会(高校の部)サッカー競技会)で日大藤沢さんや日大山形さんと言った格上のチームと試合をして、得点されたり責められたりする経験をして、どうやって我慢するかを改めて確認する事が出来た」と直前に参加した大会での経験が大きかった事、そして、それを最後まで試合に活かし続けた選手たちに満足そうに話してくれた。
同点ゴールの起点、そして試合を決するPK戦で勝利に貢献した板倉は「触れそうで触れない展開が続いて悔しかったですが最後の最後に勝つ事が出来て良かったです。」と満面の笑みだった。
惜しくもその手から勝利がこぼれ落ちてしまった明治学院。序盤から積極的に攻め主導権を握っていただけに追加点を奪えなかった事に悔いが残るだろう。それだけに試合後PKを外し号泣する2年生を先輩達が笑顔で慰めながら抱き抱えベンチに戻る姿は、より気丈に見え印象的だった。
(取材・文 Kazuhiro.N)