2023年6月18日、日産フィールド小机で、令和5年度 全国高等学校総合体育大会サッカー競技 神奈川県2次予選 決勝「日本大学藤沢高校（以下、日大藤沢）対 桐光学園高校（以下、桐光学園）」の一戦が行われ、FW丸茂晴翔（14）のハットトリックを含む4得点で桐光学園が日大藤沢に勝利し、全国制覇を達成した2019年以来、4年振り15回目の優勝を飾った。この結果、桐光学園が神奈川県第1代表、日大藤沢が第2代表として7月29日から北海道旭川市で開催される令和5年度全国高校総体（インターハイ）「翔び立て若き翼 北海道総体2023」サッカー競技に出場する。
それは試合を決定づけるゴールだった。46分、ショートカウンターでボールを前方に持ち出したMF松田悠世（10）からの縦パスを受けた丸茂はGK野島佑司（1）の動きを読んでチョコンとボールを浮かした。ふわりと待ったボールはその後、転がりながら振り返った野島の視線の先にあるゴールに吸い込まれた。
プリンスリーグに所属する2チームを加えて争った今年最初の神奈川No.1決定戦。「絶対に負けられない」と言うプレッシャーを跳ね除け、今日も桐光学園は攻守に渡って躍動した。立ち上がりは日大藤沢ペース。MF安場壮志朗（10）が攻撃の起点となりMF会津恒毅（11）が右サイドからDF尾野優日（5）が左サイドから鋭いクロスを放り込むなど桐光学園ゴールに迫る。桐光学園も松田の個人技でボールを保持し、徐々に攻撃のリズムを作り始める。
すると12分、今大会初先発のDF加藤竣（19）が左サイドからクロスを入れるとFW宮下拓弥（9）がこれを折り返し、ボールはGK野島の前へ。そこへ一瞬早く頭を差し込んだ丸茂がこれを押し込み、桐光学園が先制する。これで勢いに乗った桐光学園は30分、MF齋藤俊輔のゴール前への浮き球が混戦から溢れたところをMF羽田野紘矢（8）が決め、2点差として前半を折り返す。
後半に入っても手を緩めない桐光学園は46分、先述の丸茂のゴールで日大藤沢の反撃の出鼻を挫き、3点差とリードを広げる。諦めない日大藤沢もMF岩内類（20）を投入、攻撃の起点が増えた事でボールが桐光学園陣内で回り出しゴールに迫るが、GK渡辺勇樹（1）の好セーブに阻まれ得点とはならない。
すると72分、ショートコーナーのリターンを受けた松田がシュート。これはセーブされるが、溢れたボールに丸茂が鋭く反応して蹴り込みハットトリック達成。丸茂は、右手の人差し指、中指、薬指の3本を立て、3得点をアピールすると「怪我してサッカーが出来ていない仲間や応援してくれる仲間があっての自分なので一緒に喜びを分かち合いたい」とピッチ脇から応援してくれた選手たちの元へと走った。
4点差と大差になったものの一矢を報いたい日大藤沢も最後までゴールを目指すが、桐光学園は交代で投入されたサブの選手たちも積極的にハイプレスを掛け球際の強さで対応、キャプテンの渡辺も最後尾から喉を枯らしてチームを鼓舞し、結局4-0で日大藤沢に快勝し、4年振りに神奈川の王者に返り咲いた。
試合後、桐光学園・鈴木勝大監督は「気持ちの入ったファイナルだったんじゃないかと思います。守備の意識が非常に高く献身的に選手個々が身体を張って良い守備が出来た。」と選手たちを称賛した。また大会を通じて無失点で終えた事に関しては「もちろんピンチもありましたが、結果としてゼロという形を残せた事は彼らも私にとってもチーム全体として自信になる」と満足そうだった。また試合を重ねる毎に成長を見せた丸茂については「彼（丸茂）にはずっとプレッシャーを掛けて来て、前線で良い守備をする、身体を張る、でもFWはそこでゴールと言う物を付け加えて行かなくてはいけない。そう言う中では少し景色が悪かったので、この大会を通じて少し成長した部分はあるのかな」と一皮剥けた丸茂を評価した。
惜しくも敗れてしまった日大藤沢・佐藤輝勝監督は「やっぱり桐光さんは強かったですね。何とか剥がそうとしたのですが…」といつも通りの柔らかな語り口ながらもその表情は悔しさが滲んでいた。しかし次の瞬間には「でもウチにはウチの（目指す）サッカーがありますから全国の強豪とやって（もっとチームを作って）自分たちのサッカーで選手権は獲りに行きます。」とその目は力強く輝いていた。この日で順位が決してしまった両チームだが、本大会では横一線の再スタート。互いのサッカーを全国で磨き上げながら、今度は全国の頂点を目指し、是非とも旭川の地で再び頂点を競い合って欲しい。
（取材・文 Kazuhiro.N）
