2022年12月11日、国立競技場で高円宮杯 JFA U-18 サッカー プレミアリーグ2022 ファイナル 「川崎フロンターレU-18(以下、川崎フロンターレ)対サガン鳥栖U-18(以下サガン鳥栖)」 の一戦が行われた。
プレミアリーグ初参戦ながらスタートからの快進撃でEASTを制した川崎フロンターレに対し、終盤のヴィッセル神戸U-18との優勝争いを振り切ったサガン鳥栖、共に勝てば初優勝となる一戦は、スタンドに8572名という多くの観衆を集め、川崎フロンターレボールで13時にキックオフされた。
試合は、静かな立ち上がりで始まる。川崎フロンターレは、リーグ戦同様、後方からの組み立てでチャンスを窺う。これに対し、サガン鳥栖は落ち着いて守備を形成し、奪ってから攻撃への転換を狙う。すると6分、サガン鳥栖は、MF福井太智(10)が中盤でルーズボールを拾うとドリブルからミドルシュートを放つ。低い弾道で枠内に飛んだボールであったが、これは川崎フロンターレGK濱崎知康(21)が横っ跳びでセーブし先制を許さない。
対する川崎フロンターレも32分にMF大関友翔(10)が縦パスに鋭く反応しDFを交わしてゴール前に抜け出すと逆サイドへグラウンダーのクロス、しかし、サガン鳥栖も集中した守備でフィニッシュをさせない。このままスコアレスで終わるかと思われた前半終了間際、試合はいきなり激しく動き出す。44分、DF江原叡志(22)の上げた高いクロスボールをGK栗林颯(1)が処理に行くもハンブル、詰めていたFW五木田季晋(9)が、このボールを奪ったところをGKが倒してしまい判定はPK。このPKをDF松長根悠仁(3)がど真ん中に蹴り込み、川崎フロンターレが先制する。
しかし、直後の45+1分、サガン鳥栖は中盤で奪ったボールを右サイドに展開。これをDF山本楓大(2)が中央にクロスを入れると、左サイドから走り込んできたFW増崎康清(17)が絶妙なタッチからゴールに流し込み、前半を1-1で折り返す。
良い形で前半を終えたサガン鳥栖は、後半に入ると序盤から攻撃のギアを上げる。すると61分、福井のスルーパスでFW楢原慶輝(7)がゴール前に抜け出し、GKを引き付けたところで逆サイドに折り返すと詰めていたDF大里皇馬(11)がフリーでゴールに流し込み逆転に成功。勢いに乗るサガン鳥栖は、63分、福井が高い位置でのプレスからボールを奪うとドリブルでゴール前に持ち込みシュート、これがゴールに突き刺さり、リードを2点に広げる。
何とか反撃に出たい川崎フロンターレは、69分、途中出場のFW岡崎寅太郎(20)が、前線で激しいプレッシャーを掛けボールを奪取、五木田とのワンツーでゴール前に躍り出ると右足一閃、豪快にゴールネットを揺らし、その差を1点に。更に川崎フロンターレはバックラインにDF信澤孝亮(13)を入れるとDF高井幸大(4)を前線に上げ、パワープレーに出るが、サガン鳥栖もDF竹内諒太郎(3)を中心に集中して守り切り、結局3-2で粘る川崎フロンターレを振り切り、真の高校年代日本一を勝ち取った。
終了のホイッスルとともに歓喜の涙と悔し涙が混在した聖地・国立競技場のピッチ。表情はそれぞれであったが、どの顔も輝きを放っていた。試合後のインタビューでMVPを獲得した福井は「自分にとってサガン鳥栖はなくてはならないものだと思いますし、ここまで育ててくれた親でもあるので、自分が何か恩返し出来るかっていうのもプレーでしか見せる事が出来ないので、結果として優勝して終われた事はすごく良かった」と語ってくれた。
また惜しくも敗れてしまった川崎フロンターレの大関は「今日の試合で自分が勝たせられなかった事に責任を感じていますし、今日の試合をやって思ったのは、福井選手みたいなゲームをコントロール出来るプレーヤーになって行かないといけない思いますし、彼を超えなければ日本代表はないと思いますし、中村憲剛さんや大島僚太さんの様なゲームを作れる選手に追いついて追い越せるようになりたい」と次を見据えたコメントをくれた。
3年ぶりに開催されたプレミアファイナル。もう滞る事なく来年も再来年もその次も…歴史が刻まれていく事を願いたい。
(取材・文 Kazuhiro.N)