2023年11月4日、等々力陸上競技場で、2023年度 第102回 全国高校サッカー選手権大会 神奈川県2次予選会 準決勝「湘南工科大学附属高校(以下、湘南工科)対 日本大学藤沢高校(以下、日大藤沢)」の一戦が行われ、日大藤沢が、MF安場壮志朗(10)のハットトリックを含む4得点と攻撃力を魅せ湘南工科の追撃を振り切り、連覇のかかる決勝戦へと駒を進めた。
第1試合がPK戦にもつれ込んだ影響から37分遅れで準決勝第2試合は湘南工科のキックオフで始まった。
序盤、堅さの目立ち本来の『ボールを動かす』事が出来ない湘南工科。9分、左サイドから侵入したDF尾野優日(5)の鋭いクロスを安場が難しい体勢からゴールに流し込み、日大藤沢が幸先良く先制する。
失点を機に徐々に本来の動きを取り戻し始めた湘南工科は12分にゴール正面でFKを得るとFW中山陽輝(10)がゴール左隅を直接狙うが惜しくもポストに阻まれ追い着く事が出来ない。
すると日大藤沢は20分、再び尾野のクロスをFW山上大智(9)が頭で折り返すとこれを安場が合わせ2点目。安場は26分にも『いつもは達也(DF宮﨑達也(4))とかキヨ(MF諸墨清平(8))に任せているのですが、今日は調子が良いので蹴らして欲しい』と譲って貰った直接FKを決めてハットトリックを達成する。
思わぬ形で失点を重ねてしまった湘南工科だったがそれでも諦めない。34分、中山の直接FKをGKがクリアしたボールをMF上野海里(6)が決めて1点を返す。
しかし、日大藤沢の勢いは続く。40+1分、安場のクロスを諸墨がヘディングで合わせ再び3点差に。『湘工(湘南工科)は本当に良いチームなので3点取っても決まらないと思っていたので大きかった』日大藤沢・佐藤輝勝監督が試合後にそう漏らした通り貴重な追加点となった。
ハーフタイム、『ハイプレッシャーで止めに行く』と言う選手たちの肌感に対し『足攣るぞ』と返す佐藤監督。『それでも止めに行く』と言う選手たちに『よし、それで行こう。でも、お前たちが言った事だから最後までやり切れよ。』そんな『呼応(日大藤沢では選手の肌感を大事にしたやり取りをこう呼ぶ)』の下、ピッチに登場した日大藤沢。前半途中から本来のボールを動かすサッカーが機能し始めた湘南工科との鬩ぎ合いが続く。73分に中山の直接FKが決まり湘南工科が1点を返したものの、結局、監督との約束を守り、最後までハイプレスをやり遂げた日大藤沢が4-2で勝ち切り、連覇のかかった決勝戦へと駒を進めた。
試合後、佐藤監督は『(選手たちは)最後の最後まで真っ向勝負をやってくれた。本当に恵まれてますね僕は。選手たちが応えてくれたんですから…』と選手たちが自分たちで考えやり遂げた試合を讃え、その成果を喜んだ。
また、厚木北戦に続き、今大会2度目のハットトリックを決めた安場は、一つ年上の先輩・森重陽介(現、清水エスパルス)からの激励の電話を受けたエピソードを交えながら『去年も優勝してて、今年も(勝って)2連覇すると言う思いがみんなにある。まだ準決勝を勝っただけで優勝しなければ意味がないので、この1週間しっかり準備して臨みたい。』と意気込みを語った。
夏のインターハイ、県予選で桐光学園に、全国では明秀日立に敗れた日大藤沢。敗戦を糧にその後の和倉ユース、青森ユース、そしてリーグ戦を経て、チームを再構築してきた。悲願の全国制覇に向けて、まだその歩みは止まらない。
惜しくも昨年の決勝の借りを返せなかった湘南工科。立ち上がりこそ硬さを見せたものの徐々に本来の『神奈川一ボールを動かすサッカー』を魅せた戦いぶりは見事だった。敢えてたらればを言うならば前半の中山の直接FKがゴールネットを揺らしていたら…悔やんでも仕方はないが、全国に送り出したい好チームだった。
(取材・文 Kazuhiro.N)