2023年11月12日、ニッパツ三ツ沢球技場で、第102回全国高等学校サッカー選手権大会神奈川県2次予選 決勝戦「桐蔭学園高校（以下、桐蔭学園）対 日本大学藤沢高校（以下、日大藤沢）」の一戦が行われ、日大藤沢が、MF荻原大地（16）の前半に挙げた決勝ゴールを守り抜き、自校初の神奈川連覇を達成、全国大会出場を決めた。
前週の準決勝とは打って変わって11.1℃という季節相応の寒さの中、試合は桐蔭学園ボールで定刻通りにキックオフ。開始早々から積極的に仕掛ける日大藤沢は MF安場壮志朗（10）を軸に左サイドのDF尾野優日（5）の攻め上がりからゴールを狙う。対して桐蔭学園はコンパクトな守備からMF佐野秀斗（6）が中盤でタクトを振るいワイドな展開からじっくりと日大藤沢ゴールを目指す。
そんな鬩ぎ合いの中、試合を動かしたのは日大藤沢。20分、中盤でボールを保持した安場からのパスを受けたMF諸墨清平（8）が浮き球をゴール前へ。これをFW山上大智（9）がDFの裏に頭で逸らすと走り込んだ荻原がGK神保颯汰（1）と競り合いながらも右足のつま先でゴールに流し込み先制する。
追いかける桐蔭学園はサイドが変わった後半、スピードのあるFW田中佑紀（9）を投入、攻撃にアクセントを加える。47分にはFKのセカンドボールを回収したMF小林宏大（19）が右サイドから折り返すとこれをDF山本蒼梧（3）がヘディングで合わせるが枠を捉えられず追いつく事が出来ない。すると56分、DFラインでのミスをMF佐藤春斗（7）にカットされ、ショートカウンターからGKと1対1の局面に持ち込まれるが放たれたシュートはクロスバーに直撃、追加点は逃れる。直後の58分、これまでも積極的に仕掛けを魅せていたMF谷琉真（10）が小林のスルーパスに反応、ゴール前に躍り出ると渾身の力を込めて左足を振り抜くが、日大藤沢GK野島佑司（1）の身体を張った好セーブで弾き出され、最大のチャンスを逸する。その後も諦めず攻め続けた桐蔭学園だったが、日大藤沢も力の入った守備で応戦し、結局このままタイムアップ。日大藤沢が2年連続7回目の選手権大会出場を決めた。
試合後、日大藤澤・佐藤輝勝監督は『神奈川（を勝ち抜くの）がどれだけ大変なのか一戦一戦（優勝を果たした今）身にしみています。厚木北さんの粘り強さ、慶應さんの一体感、湘南工科さんの巧さ、今回は自分たちがやりたかった「動かし」にも桐蔭さんがしっかり作ってきて慌てずにやってきた。』と厳しい戦いが続いた事を顧みながら『こう言うビッグゲームの時にいかに自分たちを解放してやれるかですが、準決勝、決勝とウチらしくやれたし、ひとりひとりが「負けたらどうしよう」ではなく、球際に譲らないでプレーしてくれた。』と選手たちを労った。また、優勝を決めたゴールを挙げた荻原に対しては『守備で広範囲にやって、攻撃でも良いタイミングで縦でも横でも、本当、縦横無尽によく走ってくれた。今日は荻原のおかげでした。』と夏以降、著しく成長を遂げ、大事な試合で結果を残してくれた事を喜んだ。
大一番で決勝点を決めた荻原は『キヨがボールを浮かせて山上が逸らしてくれると思ったので裏のスペースに思い切って走り込んで足先で合わせました。』とゴールを振り返った。実はこのゴールが荻原自身にとっての公式戦初ゴール。その事に関しては『普段、（ゴールシーンに）直接絡む事も少ないので、そんな中で今日はチームの勝利に貢献できたのでとても嬉しいです。』と緊張しながらも嬉しそうだった。
惜しくも2020年以来の選手権出場にあと一歩のところで手の届かなかった桐蔭学園。緻密でフレキシブルな戦術はインターハイ予選、プリンスリーグ関東を経てこの選手権予選でも冴えを見せた。これに対応する選手個々のスキルも春以降着実に伸びを見せた。全国の舞台でのお披露目は叶わなかったが、残されたプリンス関東2部でしっかりと結果を残し、1部昇格を是非とも勝ち取って欲しい。
（取材・文 Kazuhiro.N）
