2023年11月4日、等々力陸上競技場で、2023年度 第102回 全国高校サッカー選手権大会 神奈川県2次予選会 準決勝「桐光学園高校（以下、桐光学園）対 桐蔭学園高校（以下、桐蔭学園）」の一戦が行われ、延長を含めた100分間でも決着がつかず、もつれ込んだPK戦でGK神保颯汰（1）が負傷を払い退ける活躍を魅せ、桐蔭学園がインターハイ全国準優勝の桐光学園を破り、決勝戦に駒を進めた。
この時期としては異例の27.5℃という暑さを記録した快晴の青空の下、試合は定刻通りにキックオフされた。
開始直後から桐光学園は持ち味のハイプレスからの展開で積極的に相手陣内への侵入を試みる。しかし、今日はこのハイプレスが裏目に出る。11分、高い最終ラインからDF川村優介（5）が前線にフィードパスを送ろうとしたところにFW瀬尾凌太（11）が勢い良く詰めパスカット、すぐ様そのボールを回収すると無人のゴールへ流し込み、桐蔭学園が幸先良く先制に成功する。
思わぬ形で失点を喫した桐光学園だったが、13分にはMF小西碧波（7）のパスを受けたMF松田悠世（10）が、17分には中央で相手のパスをカットしたFW宮下拓弥（9）がゴールを狙うがいずれも枠を捉える事が出来ない。すると26分、今度は桐蔭学園にアクシデントが…
スルーパスに反応しゴール前に侵入したFW丸茂晴翔（14）を止めに飛び込んだ神保が交錯、右目の下を切る負傷を負ってしまう。10分近くの治療を経て神保は戦列に復帰するものの桐光学園の攻撃は容赦なく神保を襲う。これに対し神保も臆する事なく身体を張って対応、9分余りに及ぶアディショナルタイムも無失点に抑え桐蔭学園が1点のリードで前半を終了する。
『インターハイで逃した全国制覇を取り返す』という最大の目標を掲げる桐光学園に残された時間は40分間。この思いが後半早々に試合を動かす。45分、松田が右サイドをドリブルで仕掛け中央へラストパス、詰めていた宮下がしっかりと合わせ桐光学園が試合を振り出しに戻す。これで勢いに乗った桐光学園は、63分には右サイドからのクロスに逆サイドで待ち構える宮下が右足のダイレクトで合わせるが、ボールは枠外。最大のチャンスを逸する。結局、延長の20分を含め攻め続けた桐光学園だったが、決着をつける事は出来ず勝負はPK戦へ。
桐光学園の先攻で始まったPK戦、双方1人ずつの失敗で迎えた4人目、宮下の渾身の一撃を神保がジャストストップ。桐蔭学園は5人目のDF吉垣陽翔（2）がしっかりとゴールマウスに収め12日にニッパツ三ツ沢球技場で行われる決勝戦に進出を決めた。
試合後、右目下からの出血で目の中も赤く染めていた神保だったが『ナイスファイト！怪我は大丈夫？』の問いかけに『大丈夫です！』と笑顔を見せながら力強く応えてくれた。八代修監督も絶対的な信頼を寄せるキャプテンが、大きく鍵を握る決勝戦。怪我が少しでも癒えてより良い状態でその舞台を迎えて欲しい。
また、惜しくも志半ばで夢が潰えて（ついえて）しまった桐光学園。延長後半アディショナルタイム、たくさんの観客が逆転を信じて手拍子で声援を送ってくれたその景色を忘れずに、残されたもう一つの目標であるプリンスリーグ関東1部への昇格をぜひ実現して欲しい。
（取材・文 Kazuhiro.N）
