2023年10月1日、桐光学園サッカー場で、高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ 2023 関東2部 第14節「桐光学園高校(以下、桐光学園)対 山梨学院高校(以下、山梨学院)」の一戦が行われ、山梨学院がFW小日山滉生(16)の2ゴールで桐光学園を破り昇格争いレースに名乗りを挙げた。
前節で手痛い逆転負けを喫した桐光学園。早々に得点を奪い主導権を握りたかったが、 13分、自陣ゴール前の混戦でハンドリングの反則を犯し山梨学院にPKを献上する。キッカー小日山は「PKは自信があるのでいつも通りに蹴った」の言葉通り、落ち着いて決めて山梨学院が先制する。
思いがけない失点で追う展開となった桐光学園だったが、すぐさま反撃に転じると MF羽田野絋矢(8)が輝きを魅せる。22分には相手陣内でセカンドボールを回収、シュートに持ち込むがここはGK小原稜也(17)の好セーブに遭い同点には出来ず。
すると飲水明けの28分、左サイドでボールを保持すると今度はゴール前のFW宮下拓弥(9)に浮き球のピンポイントクロスを供給。宮下が相手DFと競り合いながらも確実にゴールネットを揺らし、桐光学園が同点に追いつく。これで勢いに乗った桐光学園は攻撃のギアを更に上げると36分、40分とMF吉田晃大(16)が、ゴールに迫るが勝ち越しとはならず、結局、1-1のまま、勝負は後半に持ち越される。
早い時間に勝ち越し、自分たちのペースに持ち込みたい桐光学園は後半に入ると59分、吉田に変えてMF齋藤俊輔(11)を投入し活性化を図る。63分には羽田野のパスを受けた松田がペナルティエリアに侵入、ここは相手のディフェンスに阻まれるものの、こぼれ球を宮下がシュートするが惜しくも枠外へ。更に65分には宮下が中央付近からドリブルで持ち込みシュートに持ち込むもののゴールには繋がらない。
「後半はもっと攻めていくサッカーをしよう。」と後半のピッチに送り出された山梨学院は徐々に高い位置でボールを捉えるようになると、66分にはカウンターからFW柏木勇飛(20)が推進力を活かしてゴール前に侵入、GK渡辺勇樹(1)と1対1の場面を作るが、ここは渡辺に軍配が上がる。
すると74分、途中出場のFW山田逞人(26)の左からのサイドチェンジを受けたDF鈴木琉斗(2)がDFを携えながら、右サイド深くまで持ち込むと体勢を崩しながらもラストパスをゴール前に侵入した小日山に託す。「自分にとっては苦手な形だったが(鈴木からの折り返しが来ると)信じて入っていった」小日山がこれを冷静に流し込んで遂に山梨学院が勝ち越しに成功する。
再びリードを許した桐光学園はMF山本陽大(22)を入れ更に攻撃的に出るが、山梨学院もキャプテンのDF坪井昊(3)を中心に身体を張ってこれに対処、結局、23本のシュートを浴びながらも最少失点で切り抜けた山梨学院が桐光学園を破り、勝点を24に伸ばし昇格争いも視野に入る4位に順位を上げた。
山梨学院・岩永将監督は試合後「相手の個の能力が高く、試合前に1対1では勝てないから2人3人で相手より運動量を持って囲い込んで対応して行こうと(選手たちに)話した。それに対して(選手たちは)凄く走ってくれた。」とプラン通りに選手たちがゲームを進めてくれた事に満足げな表情だった。また、島垣亮吾コーチは「(昇格一年目でルーキーリーグを優勝した)一年生たちがこのグラウンドで勝っているので彼ら(トップチーム)にも何としても勝って欲しかった。結果を出してくれて良かった。」と嬉しそうに話してくれた。
惜しくも手痛い連敗を喫してしまった桐光学園。その攻撃力に衰えはなく、原因はメンタルな部分が大きく起因しているように感じる。23本のシュート数は圧巻だが、ポストを大きく逸れるもの、クロスバーを超えていくものが多かった。中盤での不用意なパスミスからのロストも目立った。「勝たなきゃ」「決めなきゃ」、真面目さ故にそんな焦りのある空気感が選手から発せられていた。苦しい時期だからこそ、ひとつのパスも「出す」のではなく「託す」…同点ゴールに繋がった羽田野のクロスが正にそうであった様に、今一度自分の周りの仲間を意識しながら、次節では相手ゴールにボールを運んで欲しい。
(取材・文 Kazuhiro.N)