2023年9月3日、桐光学園サッカー場で、高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ 2023 関東2部 第10節「桐光学園高校（以下、桐光学園）対 西武台高校（以下、西武台）」の一戦が行われ、桐光学園がFW宮下拓弥（9）のハットトリックを含む大量7得点で西武台を圧倒、後期開幕戦を白星で飾り、首位に浮上した。
「相手（西武台）は前回（リーグ開幕戦）2-0からうちに逆転負けをして悔しい思いをしている。相当なメンタルで来るのでそこに負けないように」試合前にこう話して選手をピッチに送り出した桐光学園・鈴木勝大監督だったが、終わってみれば7得点での勝利に「スコアは出来過ぎですね」とその表情は満足そうだった。
試合は序盤から桐光学園が持ち味のハイプレスが機能して高い位置でボールを支配、西武台ゴールに激しく迫る展開が続く。
試合が動いたのは11分、右サイドでボールを保持したMF松田悠世（10）がDFを引きつけながら中央へ。前には2枚のDFが待ち構える中でGKの位置を確かめながらコントロールされたシュートでネットを揺らし先制する。
勢いに乗る桐光学園は15分、16分とFW丸茂晴翔（18）が推進力を活かしてゴールに迫ると37分には、その丸茂が右サイドから宮下が中央に折り返したグラウンダーのパスに素早く飛び込み追加点を挙げ、前半を2点のリードで折り返す。
後半に入っても桐光学園は更に攻撃を加速し西武台を畳み掛ける。58分、DF川村優介（15）のロングフィードを受けた宮下が豪快に決め、3-0に。
何とか反撃の糸口を掴みたい西武台は66分にMF西村航（10）が自らドリブルからシュートに持ち込むが、ボールは枠を捉えきれない。
すると69分には丸茂にこの試合2点目のゴールを決められてしまう。それでも72分にはDF治部田元太（11）がミドルシュートで応酬し、リズムを引き寄せようとするが、この日の桐光学園の勢いは止められない。
74分にはMF齋藤俊輔（11）のFKを宮下が合わせ5-0、80分には、DF加藤竣（6）のトライからリフレクトしたボールを宮下がハットトリックとなるゴールを決めて6-0と更にリードを広げると、82分には宮下のシュートが、相手DFに当たり溢れたところを途中出場のMF増田遥希（12）が押し込み、止めを刺した。
試合後、西武台・守屋保監督は「正直なところ（感想は）何もないですね。0-3と結果を予想していたが、それ以上になってしまった。ひとつひとつの局面、ボールのないところで判断の遅さ、全ての面で足りないものを桐光さんに教わってしまった。時期を考えると取り返していくのはすごく難しい事。より集中力を高めながら、我々も含めてこれからみんなで向き合いながら前向きに小さい事からでも埋めていきたい。」と自らをも戒めながら選手たちの奮起を促した。
一方、大差での勝利を掴んだ鈴木監督は「7点取った事よりもゼロで抑えた事がチームにとって大きい勝点3になったと思います。これからも難しいゲームが続いていきますが、失点をゼロで抑えて行く事がリーグでもトーナメントでも大事な事なので、その準備を心がけてやって行きたい。」と大量得点での勝利にも関わらず、こちらも冷静に自らをも引き締めるように語ってくれた。
インターハイの決勝であと一歩のところで優勝を逃してしまった桐光学園。すぐ目の前で見る事になった「対戦相手の優勝」という景色は選手たちにとっては悔しさと同時に大きな刺激になったようだ。選手個々の顔つきは精悍さを増し、身体付きもより絞られていた。プレーひとつひとつの質に拘り、選手同士の距離感や関係性も終始コンパクトかつ綿密さが保たれていた。
しかし、周りも内容は違っても同じ様に悔しさを味わい、トレーニングを続け進化を遂げているかも知れない。キャプテンのGK渡辺勇樹（1）が「インターハイ決勝で先に2失点してしまい苦しい試合にしてしまった。後ろがゼロで抑えれば今年のタレントなら必ず点は取ってくれるので、これからもよりゼロにこだわっていきたい」と話していた様に「国立で優勝」という最終目標に向け、今後もより質に拘り、慢心する事なくひとつひとつ階段を踏み締めていって欲しい。
育成年代の進化は目覚ましい。3年生にとって残された時間は限られているが、その中でどう変わっていくのか、ますます目が離せなくなってきた。
（取材・文 Kazuhiro.N）
