2023年5月7日、神奈川県立保土ヶ谷サッカー場で、高円宮杯JFA U-18 サッカープレミアリーグ 2023 EAST 第5節「川崎フロンターレU-18(以下、川崎フロンターレ)対 船橋市立船橋高校(以下、市立船橋)」の一戦が降り頻る雨の中で行われ、2-2の引き分けで勝ち点1を分け合った。
ここまで3勝1敗で首位に立つ川崎フロンターレは、序盤、市立船橋のハイプレスから裏を狙う攻撃に苦しむが、徐々に本来のパスサッカーを展開、対する市立船橋も球際の強さでボールを奪いカウンターから反撃し試合は膠着するが、41分、川崎フロンターレのMF尾川丈(10)のゴール前での仕掛けで出たこぼれ球をMF志村海里(7)が決めて先制する。ここまで3引き分けながら未勝利の市立船橋も後半早々の47分に前半終了間際に投入されたFW伊丹俊元(29)がゴールを決めて同点にすると、ここから中盤を支配、MF太田隼剛(7)を起点にFW郡司璃来(10)が70分、79分とゴール前で決定機を演出するも、再びネットを揺らすには至らない。
すると87分、前掛かりになった相手からボールを奪った川崎フロンターレはDF元木湊大(4)が前線にロングボールを送る。これをFW岡崎寅太郎が納め叩くと途中出場のFW香取武(28)が豪快に決め勝ち越し。しかし、粘る市立船橋も急激に雨脚が強くなり出した90+3分、DF宮川瑛光(4)がゴール前に入れたボールに飛び出した川崎フロンターレのGK濱崎知康(1)が味方DFと交錯、こぼれたボールを拾った郡司が落ち着いて流し込み追い着くと、結局このままタイムアップ。雨中の激戦は引き分けで終わった。
試合後、いつもの様に温和な物腰でインタビューに応じてくれた川崎フロンターレの長橋康弘監督。「日頃のトレーニングから、本当に今、試合に残念ながら出れてない選手が、非常に前向きに取り組んでくれて。今日、しっかり出た選手がやってくれたのかなっていう風に思います。」と選手の日頃の頑張りを評価する一方で「やはり私たちはボールを大事にするっていうところが、基本的なコンセプトがあるので…セカンドボールを拾われて、そこからまた、更に縦に速い攻撃。そういうところは、ゲームをやりながら、選手たちも対応していかなきゃいけない。もちろんベンチワークもそうなんですけど…」と悔しさを表情に滲ませながら語ってくれた。
また、ゴールを決めた2選手も「セカンドの部分で、負けているところが多くて、前半危ないシーンがあって、後半も立ち上がりから相手のペースで、そのまま失点してしまって。すごくもったいないゲーム、勝てたゲームだったんじゃないかなと思います。(志村)」「前半から結構、市立船橋のプレスが激しくて、僕が試合に入って『絶対この試合の流れを変えよう』と思ったので、それが得点に表れてすごくうれしいですけど、やっぱり最後失点してしまって…(香取)」と表情が緩む事がなかった。とはいうものの相手の時間帯を凌ぎながら「ボールを大事に」前後左右、そして緩急をつけて相手を囲い込んでいくサッカーは健在だった。あとは「圧倒する力強さ」か?足りない部分があるだけに今後の成長は楽しみだ。惜しくも初勝利はお預けとなった市立船橋。攻守に渡ってピッチを駆け巡っていたキャプテンの太田。その姿に1月のジャパンユースの時に「今年はインターハイ、プレミア、選手権と本気で三冠目指しているので、三冠取るために日々の行動とか意識している」と話してくれた言葉が蘇った。また、後半の立ち上がりに同点ゴールを決めた伊丹。そして、再三に渡りゴール前を脅かした郡司。彼らを筆頭に今日の試合で市立船橋の試合運びに改めてその「強さ」を感じた。まだまだ「三冠」への道は始まったばかり。ここからのジャンプアップに大いに期待したい。
(取材・文 Kazuhiro.N)