とにかくサッカーが好き。そんな選手を求める横浜隼人の変革とは

創設38年を誇る私立高校サッカー部が変革に挑戦している。高円宮杯JFA U-18サッカーリーグ2021 神奈川K3リーグに所属する横浜隼人高校だ。

横浜隼人は野球・卓球・バレー・剣道など多くの部活が全国大会に出場しており、スポーツ推薦で入学する生徒からなるスポーツクラスが各学年2クラスずつある。いわゆるスポーツ強豪校だ。

横浜隼人が参戦するK3リーグはそれぞれ10チームずつで競われるK1,K2リーグの次に位置する。県下200以上の2種チームがあることから中堅以上であることは間違いない。しかし、横浜隼人はそこに甘んじることなく上を目指し変革に挑戦している。

この変革について柴田仁司監督、高松明良コーチ、芦村将太郎コーチに話を聞いた。

手前右から柴田監督、高松コーチ、芦村コーチ

“サッカーが大好きでサッカーのために”努力できる選手を獲得

これまでの横浜隼人サッカー部のキーワードは「守備重視」「残り15分で走り負けない」「周囲から応援されるチームになる」だった。これは今後も変わらない。では何を変えていくのか。選手獲得の思想だ。これまでは練習会に参加した選手の中からサッカースキルの高い選手を獲得していた。当然上を目指しチームを強化していくためには必然な選手獲得だ。しかし、今後は「サッカーが大好きな選手サッカーのために努力できる選手チームのためにハードワークできる選手」この3つの選手像を設定して選手獲得を進める。

一見すると月並みな選手獲得方針に見えるかもしれない。しかし、そこには明確なこだわりがある。「例えば、試合で何点も一人でゲットできるエースがいたとしても、指導者の話を全く聞いていないような選手はどんなにサッカーが上手くてもうちにはいらない」そう言い切るのは高松コーチ。これまでの選手獲得基準となっていたサッカースキルについては一切言及されないのだ。

身長149cmの原石を高評価

では、具体的にはどんな選手を横浜隼人の指導陣は評価するのだろうか。

神奈川県内のジュニアユースの試合を視察に行った際、その選手は後半から交代出場した。中学3年で149cmという身長はハンデになる可能性が非常に高い。事実、ボディコンタクトを伴うシーンでは潰されてしまっていたそう。しかし、どんなに身長差がある相手に対しても恐れることなく向かっていく。パスが回ってきた際は、保持することが彼のフィジカルにおいては得策ではないことを理解しており、ワンタッチもしくはツータッチ程度で捌く。決して長い出場時間ではなかったが、短時間でも彼がサッカーが大好きでチャレンジし続け、自分とサッカーのことをよく理解しているということが伝わってきたそうだ。

149cmの途中出場選手について聞かれたジュニアユースの指導者は驚いていたらしい。しかし、その後参加した横浜隼人の練習会でも彼は期待を裏切らなかった。誰よりも首を振り周囲をよく見る、指導者の話を食い入るように聞く姿勢は強いハングリー精神を感じさせた。

変革はやがてカルチャーに

「受け継がれているプレースタイルは全員守備、献身的な姿勢はピッチ内外で表れる」これまで30年近く横浜隼人高校サッカー部を牽引してきた柴田監督が言う伝統的な全員守備は、選手獲得の変革を通して作られる新たなカルチャーの根幹になるだろう。数年前から横浜隼人の指導陣は現場に足を運び求める選手像に合致する選手に声をかけている。サッカーが大好きでサッカーのために、チームのために考え動ける選手たちはチーム全体に一体感を与え、前のめりに練習に取り組む。横浜隼人の指導陣は、すでに変革の効果を実感しているそうだ。

横浜隼人は今年度からU-16リーガラッツォーリという私設リーグに参戦している。リーグ参戦チームは、K1リーグ所属のSC相模原ユースや、東京のT1リーグに所属する大成高、駒澤大高などの強豪揃いだ。先日行われたSC相模原ユース戦では、格上相手に接戦の末、ドローに持ち込んだ。

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U-16、つまり高校1年時からレベルの高い実戦経験を積めることは選手育成に欠かせないことだろう。

部活やクラブチームで現在は活躍できていないが、“サッカーが誰よりも好きだ”“サッカーをもっと極めたい”という選手は横浜隼人のカルチャーにフィットするだろう。一度、練習会に参加し横浜隼人高サッカー部の雰囲気を肌で感じてみることを勧める。

◾️横浜隼人高サッカー部練習会

日時:7月29日(木)13:00〜
会場:かもめパーク(神奈川県横浜市泉区和泉町6505)
対象:現中学3年生
申込方法:下記記載のうえメール(hayato.football1983@gmail.com
①氏名
②チーム名
③ポジション
④中学校
⑤身長
⑥体重

 

(取材・文 Yuya Akiyama)

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