U-15

【インタビュー】’20 U-15高円宮杯ベスト4・FC多摩 平林清志監督|選手一人一人に向けられた闘将の温かな眼差し

東京の街クラブが12年ぶりに高円宮杯ベスト4入りを果たした。
Jクラブをはじめ並み居る強豪を退け快進撃を見せたそのチームはFC多摩ジュニアユース(以下、FC多摩)。1994年のクラブ設立以来FC多摩を率いてきた平林監督に指導理念や心構えを伺った。

■ 平林 清志(ひらばやし きよし)|FC多摩JY監督

FC多摩設立の前までは地元多摩市の小学生の選抜チームのコーチをしていた。
1994年に選抜選手の父兄、当時の多摩市サッカー協会の方とFC多摩設立。ジュニアから始まったが程なく選手や父兄からの要望を受けジュニアユースチームを始動。2001年の日本クラブユース選手権(U-15)大会で初の関東大会出場を果たすとそれ以降は関東大会の常連に。2019年度の同大会では過去最高全国ベスト8まで上り詰めた。
そして、今年度の高円宮杯では街クラブとして12年ぶりとなるベスト4という輝かしい成績を納めた。
主なFC多摩出身選手:関川郁万(鹿島DF#33)、関口訓充(仙台MF#7)、佐藤瑶大(G大阪内定/明治大DF#16)

試合ではプライドを持って戦うが、上手くなるのにプライドはいらない

ーー指導はどのように学ばれてきたんですか?
年々指導経験を重ねていく中で周囲の指導者の方々とコミュニケーションをとる機会が増えてきて、良いものを吸収させてもらいました。ユース、高校の指導者の方からも学ばせてもらいました。
サッカーのトレンドは移り行くものなので、とくに自分がやりたいサッカーはこうだ、と決めて指導してきたということはないですね。ある程度トレンドはトレンドとして取り入れて、所属している選手たちに合わせてやってきました。

また、"教える側"と"教えられる側"という溝ができないように意識してますね。具体的には各学年2〜4人ずつくらいコーチをつけられる状態を整えて選手全員に目が行き渡るようにしてます。加えて、私と大久保コーチは全学年の練習に必ず行くようにして選手一人一人の様子をよく見るようにしています。

浮かない顔をしていたり心ここに在らずな雰囲気だったら声かけをしたりしています。スキルの習得を見るだけではなく、今のトレーニングで充実しているか顔色を見るということも大事な仕事かなと思ってます。
学年ごとの担当コーチに指導を任せてはいるが任せっきりで自分が選手の顔を1ヶ月見ていないという状態には絶対にしないように。必ず現場には出て、週に1,2回は一人一人の選手顔を合わせるようにしています。

ーー浮かない顔をしている選手がいた場合はどのように接するのですか?
今やっていることがちゃんと理解できているか確認したり、水分補給のタイミングでちょこっと近寄って話をしたりすることが多いですね。

ーーどういうケースが多い?
多いのは自分がうまくやれていなくて面白くないということ。そんな時には今後中学高校と上がっていく中である程度はできていないといけないことだと伝えつつ、自分の強みを消さないためにも今やるべきことだと伝えると大体は解決しますね。
思春期や反抗期でうまくできない部分を見せることが恥ずかしくて苦手な練習にしっかり取り組めない子もいますけど、そんな時はコーチ陣と一緒に場の雰囲気を良くするようにしたりしてますね。

上手くなるのにプライドはいらないとよく言ってて、他のチームと戦う時はプライドをもって臨むべきだけど、練習の場ではミスをしてもなんにも恥ずかしいことはない。練習の場でのミスは笑って誤魔化せちゃえばそれでいいんですよ。それほどミスを咎めるようなことはしないですね。
こういった雰囲気作りは若いコーチの方が上手だったりしますね。やっぱり選手たちも近い存在として色々な話ができたりするので。基本的にはコーチなどのスタッフは全員OBなんですよね。

実際にコミカルな動きで練習の雰囲気を和ませていた

大人になってもみんなで集まってサッカーをするようなチームにしたい

ーーOBの方々がいつまでもチーム愛をもっているイメージがあります。
よくOBがフットサルやソサイチを一緒にやってたりするんです。厳しい練習を一緒にやってきているので進路でバラバラになってもいつまでも仲良いんです。初蹴りは毎年100人以上はきますね。南豊ヶ丘フィールドの観客席がいっぱいになるくらいにきてくれますね。高円宮杯の準決勝のときもOBがたくさん応援にきてくれてました。

ーー指導理念を教えてください。
子供たち一人一人をしっかり見て指導することはブレないようにしています。
チームを強くすることだけにこだわるということはしないですね。各学年40人いますが、ちゃんと各学年2人以上コーチをつけて目が行き届く状態にして、サッカーをやめようと思わない、サッカーを好きでい続けられるようなサポートをしていけたらと思ってます。

ーー「不撓不屈」について
初めて関東大会で優勝して全国大会に出るとなった時に横断幕をつくりたいという声が上がったことが発端でした。諦めず最後まで戦うという気持ちをこめて、当時の父兄とコーチみんなで決めた言葉です。

ーー「#やってこーよ」について
新チームで臨んだ新人戦で予選敗退してしまってスタートダッシュに失敗した2018年度に自然と定着していったんです。なかなか結果が出なくてモチベーションが上がらない選手たちにコーチ陣が「結果出なくて苦しいけどやってこーよ」「辛い練習もやらなきゃいけないけどやってこーよ」と声かけしていたところが発端で、選手たちもだんだんと使うようになっていって気づけば合言葉になってましたね(笑)。

結局、その代は東京都U-15サッカーリーグ(T1)を優勝して関東リーグ昇格を決めたんですよね。「やってこーよ」は大きな横断幕はありませんが、その代の父兄さんお手製の小さい横断幕が何枚かあるんですよ。今では「やってこーよ」って声がかかるとなんとなく選手たちも盛り上がるんですよね。これ以外にも毎年なにかしら流行みたいなものが発生してますね(笑)。2年3年と厳しい練習が増えてくるのでそんな時に選手同士の仲間意識が効いてくると思います。

ーー今後の目標について
今回こういったかたちで自分たちのサッカーをやらせてもらえましたけど、だからといって今度は全国優勝しましょうと目標を置くというよりは、一人一人が上手くなって生涯サッカーを続けられる選手が多く出ていけばいいし、その中でプロになる選手が出ればより嬉しいですね。
一番大事なのはサッカーを嫌いにならないことだったり、情熱をもって取り組めるようにしてあげることだと思います。どんなかたちであれサッカーに関わって欲しいと思います。大人になってもみんなで集まってサッカーをやるようになったら嬉しいですね。

インタビューを終えて
FC多摩は、かねてよりチームの雰囲気が良いと聞いていた。一見すると強面な平林監督だが、選手一人一人のことをよく見て、よく思いやっている心優しい監督だった。インタビュー当日は小学生の指導にあたられていたが、話にあった通り雰囲気を良くするためにコミカルな動きや、フランクなコミュニケーションをとっていたのが印象的だった。街クラブとして12年ぶりの高円宮杯ベスト4という輝かしい成績を手にしても決して浮き足立たない平林監督。そんな名将が熱い想いを込めて育て上げる選手たちの今後の活躍が楽しみだ。
[取材・文]=秋山祐哉

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