U-12

【インタビュー】若山監督が語る「子どもにチャレンジさせる大切さ」全国大会初出場で初優勝、偉業を成し遂げたトリアネーロ町田に迫る|JFA第44回全日本U-12サッカー選手権大会

全国への切符がかかった東京都大会決勝トーナメント。ピッチサイドから「いいね今の!」「もっと行っていいよ!」「できるよ!」そう声がかかると、ピッチ上の選手たちの表情は自信に満ち溢れ、チームはプレッシャーをはねのけるかのように躍動した。

「今回はたまたま優勝させてもらいました。」

そう話すことができるのは優勝したからかもしれない。けれどそこには選手を育成する上で揺るぎない信念と情熱がある。「だから、意地でも僕たちのスタイルで勝ちたかった」。そう話してくれたのは第44回全日本U-12サッカー選手権大会東京都代表「FCトリアネーロ町田」で指揮を執る若山聖祐(せいすけ)監督。

チーム立ち上げから5年目にして都内屈指の強豪エリアである11ブロックを勝ち上がり、昨年はベスト8に終わった都大会で勝利し全国への切符を掴むと、全国大会初出場にして初優勝を果たした。そんな若山監督から自身が指導者として大切にしていることをインタビューで伺った。

-まずチーム立ち上げから全国優勝までの歩みを教えてください。

2016年6月にクラブを立ち上げて、最初は8人制にも満たないような人数でスタートしました。今の6年生で言うと、工藤敦士(背番号:7)と高橋琉(背番号:6)がクラブ創設時に、その直後にキャプテン木下勝正(背番号:8)が入ってきて、しばらくは人数も少なく一つ上の学年に混ざってやっと試合が出来るような形でやってきました。

なかなかグラウンドが確保できない、強豪チームと練習試合が出来ないなど色々難しい状況はありました。その中でも、彼らが諦めずにやってきたってことは本当に評価できます。

-今大会ではチームコンセプトである3つのテーマが選手たちのプレーでも発揮されていたと思いますが、選手の育成についてチームとしてのこだわりを教えてください。

先へとつながる選手の育成

僕らはジュニア世代の指導なので、ジュニアユース年代、ユース年代、そしてその先へと繋がっていかなければ意味がないというのが前提にあります。今回たまたま全国で優勝させてもらいましたが、僕らが目指しているのはそこではなく、選手たちがその先のカテゴリーでしっかり活躍できるような育成を第一に考えています。その中で、僕らは個人の技術や判断というところを重要視しています。そこがなければ、チームとして勝ったとしてもやはりその先が厳しくなってしまいます。

サッカーはみんなでやるスポーツなので、自分だけが良ければいいという考えではダメです。パス一つに関しても、味方のことをどれだけ考えてあげられるかがすごく大事で。例えば、味方の得意な足の方にパスを出してあげる、右から敵が来ていたら左の方にパスをしてあげる、タイミング良く入ってきた選手にパスを出してあげる、体の向きを意識して出してあげる。そういう気遣いが出来るような選手の育成にこだわっていて、それがサッカーのスキルはもちろん、ひいては社会性も身に付けることに繋がっていると思います。

サッカーは常に試合が流れているので、一つ一つ監督が指示を出しているとどうしても遅れてしまいます。なので、ゲームの中で大切なのは自己判断だと思います。もちろん僕も指示は出しますし、それによって選手が反応してくれることもありますが、一番大切なのはそういう局面において最善の選択が出来るかどうかを自分たちで考えられることだと思います。

困難な状況は全日でも都大会でも沢山ありましたが、その困難な状況に直面した時の強さや判断力、団結力というのがトリアネーロの6年生にはあったんではないかと思っています。そこを意識しながら育成してきて、それが形となって表せたのが良かったです。

-この大きな大会でも選手たちは生き生きと素晴らしいパフォーマンスを魅せてくれました。試合時のコーチングや選手との関わり方について教えてください。

選択肢と発想を組み合わせる自己判断力

練習試合や招待試合を沢山こなしてきて、彼らの中には教えてきたサッカーがしっかり頭に入っていますし体にもしみついているので、すでに選択肢がある状態でした。その上で大事なのはピッチの中での自己判断。特にゴール前は意外性がないと得点に繋がりにくいので、「こうしなさい」というプレーを連続してやっていると敵に対策されてしまいディフェンスを騙すことが出来なくなってしまいます。

サッカーは”真面目にやらなければいけない”部分と”遊ばなければいけない”部分の両方あると僕は思っています。特にゴール前はちょっとした遊び心があったり、余裕のある選手のほうが冷静に判断出来る部分があるので、ゴール前の選手には楽しんでやりなさいと常に伝えています。

楽しむためのハードワーク

楽しむためには当然ハードワークもしなければなりません。僕らの理想はずっと攻めていたいし攻撃していたい。だからボールを奪われた後の攻守の切り替えの速さという部分はかなり意識しています。奪われたらすぐハードに回収し、また二次攻撃、三次攻撃というように連続で攻撃していきます。そういう部分は、トリアネーロとしての長所であり持ち味だと思います。ですので「楽しいことをするためにハードなこともやらなければいけない」ということは、日々選手たちに伝えています。

指導者である自分の中でのルール作り

昔は公式戦でもプレーが良くないと厳しく言ってしまうこともありました。でもそれでは結果が出せませんでした。選手に100%の力を発揮させてあげることが出来てなかった、だから自分の中でルールを作りました。公式戦の時は絶対にマイナスのことを言わないと決めたんです。

練習試合や招待試合の時は僕も厳しいことをたくさん言いますけど、公式戦の”ここだけは”というところでは、とにかく選手の味方になります。選手もプレッシャーがある中で不安だと思うので。都大会では、前評判が良くて優勝候補とも言われていたので、正直全国大会の時よりプレッシャーがありました。

逆に言うと全国大会は本当に楽しんでました(笑)。僕は都大会決勝で対戦したJACPAの野口先生から色々学んだんです。サッカーを学んだというより選手たちの扱い方を学びました。野口先生は試合で選手をのせるのが上手なんです。だから、今回は絶対に選手の味方になって一緒に戦うと決めて、それに選手が応えてくれました。

選手との距離感

選手たちと遊ぶ時は僕も一緒にふざけて遊びますし、逆にやるときはグッとやります。そのメリハリが大事で、それが良い関係性作りに繋がっていると思います。なので、厳しいことを言ってもついてきてくれます。全員自分の子供だと思って、それぐらいの気持ちでやっています。

-育成年代を指導する上で一番大事なことは何だと思いますか?  

「上手くなりながら勝つ」子どもにチャレンジさせる大切さ

指導者はその場の結果に一喜一憂しないことが大事だと思います。どうしても勝たないと選手が入団してこないとか、そういうことが邪魔をして本来やらなければいけないことが度外視されてるような気がしています。リスクを負わないサッカーをするチームは結構あって、正直しっかり守備を固めて前線にフィジカルの強い選手を置き、そこにロングボールをずっと入れ続けた方が失点するリスクは少なくなりますし、その能力で得点ができるということは往々にしてあると思います。

でも、そうすると限られた選手しか成長しないと思うので、指導者としては目先の勝ち負けよりも先を見据えながら指導していかないと選手が潰れてしまうと思います。全日の決勝でも「上手くなりながら勝とう」というのをテーマとしてやってきました。(1点リードされ折り返した)ハーフタイムにも、「セーフティにやらないで、この決勝という大舞台がさらに上手くさせると思う。この緊張感の中で君たちの技術を逃げずに発揮した方が後々の人生で絶対に影響がある。」と選手に伝えました。

やはりあれだけの人が見ていて注目されて平常心でプレーするって普通は出来ないと思うんです。でもあえて選手にそれを要求しました。練習試合ではいくらでもできると思いますけど、僕はこの決勝の舞台が選手が成長する最高の場だと思ったので、あえてそこは逃げずに要求しましたし、指導者はそういうことを考えながらやるべきなんじゃないかなと僕は思っています。

もちろん日本一を決める大会も悪くないんですけど、やはり多くのチームや指導者が「みんな一緒になって選手を育てよう」と思わない限り日本のサッカーは強くならないと思うんです。「うちのチームが」と言っている間は強くなりません。現場の人間が自分の地位とか名誉とかではなく、子供にチャレンジさせる大事さを一人でも多くの人が共感してくれたら、選手たちの将来はもっともっと明るくなると思います。

-若山監督の中でこの5年目で全国取るというようなイメージというかシミュレーションみないなものはあったのでしょうか。

結果に一喜一憂せず選手たちと向き合う

選手たちは日本一になろうとしてましたけれど、今回はたまたま結果がついてきてくれただけで、僕は正直なところそんなに思っていませんでした(笑)。それを目指してやってきたわけではないですし、個人が上手くなればチームの結果は正直どうでも良いと思っています。ですので、去年の代が東京都ベスト8でもJ下部に6人内定が出た時点で全然満足していました。

でも周りからは「トリアネーロは強いんんだけど、勝てないよね」と言われてました(笑)。でもそこにムキになるべきなのか、そうじゃないのかは迷うところです。僕はこのチームから一人でも日本を代表するような選手が出たり、サッカー選手にならなくても社会の中でリーダーシップを取れるような人間が育ってくれたらいいなと思っています

それが指導者の本当の勝利だと思うんです。全国大会で優勝したから偉いというわけではないし、それが勝利だとも思っていません。だから僕はそこに一喜一憂せず、選手たちとしっかり向き合って彼らを育てていければいいかなと思っています。今回たまたま優勝しましたけど本当に信じてついてきてくれた選手たちに感謝ですね。

[取材・文・写真]=Suzumari26

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