「4歳でサッカーを始める前から外で遊ぶことが大好きでした。」そう教えてくれたのは、FC多摩でキャプテンを務める貴田遼河。
足元の技術、ヘディング、決定力など全てにおいてハイレベルなパフォーマンスを見せ、高円宮杯第32回全日本U-15サッカー選手権大会では得点王(4試合7得点)に輝いたU-15世代注目のストライカーだ。
そんな彼にこれまでのルーツと、何を考えどのようにスキルを伸ばしてきたのかインタビューした。
■ 貴田 遼河(きだ りょうが)|FC多摩JYキャプテン
東京ヴェルディサッカースクールから東京ヴェルディジュニアに加入、中学生からは活躍の舞台をFC多摩に移す。
2019年度の第34回日本クラブユースサッカー選手権(U-15)大会では中2にして得点ランキング2位(6試合9得点)、先日行われた高円宮杯第32回全日本U-15サッカー選手権大会では得点王に輝いた(4試合7得点)。
U-15日本代表候補選出
174cm 65kg 右利き
練習では物足りず、グラウンドでボールを蹴ったジュニア時代
――生い立ちからジュニア時代について教えてください。
3人兄弟の2人目として生まれ、サッカー好きな父と兄の影響で4歳からサッカーを始めました。元々は遊びでよくやっていた野球をなんとなくやりたくて、でも、気づいたら東京ヴェルディのサッカースクールに入っていました(笑)。
――そうだったんですね(笑)。そんな貴田選手も今となっては世代トップクラスのストライカーですが、周りと比べて"できる"と思えたのはいつごろですか?
(答えづらそうにしながら)そうですね...東京ヴェルディジュニアでプレーするようになった頃にはすでに同い年の中では頭ひとつ抜けていると感じていました。
小5で東京ヴェルディのグラウンド近くに引っ越してからは、そこでボールを蹴るのが日課でした。チームの練習だけでは物足りなかったんです。
成長のきっかけを求め、あえて厳しい環境のFC多摩へ
――FC多摩へ加入した理由はなんですか?
一番大きな理由は、中学入学タイミングで厳しい環境に身を置き、大きく成長するためです。練習場所が土のグラウンドだったり、午前午後の二部練習が普通だったり。こういった環境が成長のきっかけになると考えました。当時は兄がFC多摩にいて、監督がすごい人だと聞いていたことも後押しになりました。
実際に土のグラウンドでプレーすると、基本の止める・蹴るがそもそも思い通りにいかず最初はイライラしました。しかし、自分で決めたことだし、ここでなら成長すると思えたので切り替えて取り組めました。

FC多摩の練習風景(インタビュー時)
――自主トレーニングはどんなことをしていますか?
毎日欠かさず行うのは、風呂上がりのストレッチと体幹トレーニング。外部のスクールなどには通っていないため、チームとして休息日にしている月・木がオフです。
公式戦が週末に控えている時期は木曜を休息に充てますが、基本ボールにさわってますね。特に月曜は必ず自主トレーニングをしています。リフティングやかんたんなトラップ練習など、基礎的なことを重点的に行います。
あとは、坂道ダッシュをすることが多いです。10本1セットを3、4セット、週末の試合で疲労が溜まっている月曜は2セットほど。
長距離のランニングはチームのトレーニングで十分足りていると感じているため、個人ではやらないです。
コロナウイルスによる外出自粛でチーム練習がない期間はとくによく走っていました。午前中は兄と近所の公園でボールをさわり、午後は坂道ダッシュという流れです。
ーーオン/オフそれぞれのタイムスケジュールについて教えてください。
平日は朝7時すぎに起床し学校へ。16時前に学校から帰宅すると、18時半からの練習までの間に1時間ほど仮眠をとります。
ーーこれは何かパフォーマンスを上げるために意識していることなんですか?
いや、学校から帰ると眠いんで寝ちゃうんです(笑)。
チームの練習は18時半から21時までなので帰宅は21時半すぎ。夕食後、風呂上がりにストレッチと体幹トレーニングを行うのは23時半ごろ。0時には就寝し、7時間は睡眠時間を確保しています。
オフの日は夕方に1時間半ほど自主トレーニングをして、23時には就寝するようにしています。
日課のストレッチと体幹トレーニングを終えてから就寝までの自由時間は、チームメイトとオンラインのサッカーゲームを楽しんだり。
現場で得られるすべてを吸収し、目指すは「1試合平均3得点」
――貴田選手の素直さ・吸収力は平林監督も高く評価しています。これまでどのようにして課題を乗りこえ強みを伸ばしてきましたか?
例えばヘディングを課題としていたときは、チームでヘディングがうまい選手を見て考えたり、競り負けたときはうまくいかなかった理由を考えたりしています。
チームの紅白戦でマッチアップした選手に、試合中にすぐ感想を聞いたりもします。例えば自分自身が"よかった"と感じたドリブルの間合いについて、ディフェンダーにとって嫌な距離感だったかどうか確かめるためです。
――どんな選手を目指していますか?
高円宮杯準決勝でも、自分がチャンスを決めきっていれば勝っていただろうから、どんな相手でも1試合に3点取ってチームに勝利をもたらせる選手になりたいです。
イメージはリバプールのフィルミーノ。パスもドリブルもアシストもシュートもなんでもできて、その上で決定力がずば抜けている。
あとは、メッシやネイマールみたいな見ている人が楽しめるような、ワクワクするようなそんな選手になりたいです。
――最後に、FC多摩での3年間をふり返ってひと言お願いします。
FC多摩の環境・仲間でなければここまで成長できなかったし、平林監督でなければ今回ベスト4まで行けなかったです。これからも厳しく指導していって勝ち続けてほしいですね。
インタビューを終えて
インタビューを通して、貴田の成長の源泉である高い目的意識や素直さに裏打ちされた吸収力が伝わってきた。
「大きく成長するために、厳しい環境のFC多摩をあえて選ぶ」小6でこの選択ができる時点で只者ではない。自主トレーニングにおいてもスケジュールやコンディションに合わせ、自ら考えて選択する姿勢が感じられた。
YouTubeのテクニック動画などは見ないというから、現場で得られるものすべてを吸収して成長してきたのだ。試合中に客観的な意見を求め、自分の身体が忘れないうちに受け入れ修正している。
この素直さは、選手同士でそれぞれのプレーにアドバイスしあうFC多摩での練習を通して培われたものだろう。
貴田はこれまでのインタビューでも「1試合3点」と明確に口にしている。2020年度のクラブユース選手権では1試合平均1.5得点、今回の高円宮杯では1.75得点。3点台に乗る日も遠くないかもしれない。
ユースでは名古屋グランパスU-18への所属が決まっている。さらにはU-15日本代表候補にも選出された。すべてを吸収していく世代注目のストライカーは、新たな舞台でどこまで成長していくのか目が離せない。
[編集]=下妻萌